あなたの願い   藤田雅矢


シャッター商店街で変な奴に会っても、相手にしたらあかん。そう聞いていた。
 そして、煙が消えると、そいつが目の前に立っていた。
「誰や、おまえ」
「おや、見えるんですね。わたしは、シャッターの妖精。あなたの願いを叶えます」
 ちょっと驚いたけれど、願いを叶えると聞いて、「それなら億万長者にしてくれ」と、つい答えてしまった。
「は? ちゃんと聞いてますか。わたしはシャッターの妖精ですよ。そんなことができると思いますか」
「じゃあ、何ができるんや」
「店舗や倉庫、住宅のガレージなどの開口部を風雨から守り、犯罪抑止にも貢献します」
「それって、シャッターの役割やろ」
「だから、わたしはシャッターの……」
「もうええ、帰れ」
「では、願いを叶えます」
 そいつは、そばのシャッターを開けると同時に、服の模様がシャッターに同化して、ぺらりと薄くなると、そのままシャッターにくるくると巻き込まれていった。
あとには同じ縞模様の服を着た自分が立ち尽くしていた。





藤田雅矢
SF系もの書き&植物育種家

今月も参加させてもらってます。